
iGEM ScienceTokyo News 7月号
今年度のプロジェクト紹介
今年度のプロジェクトでは、は炎症性腸疾患に対して、傷ついた腸内を修復するタンパク質を生産する大腸菌を設計するということを目指しています。
炎症性腸疾患は潰瘍性大腸炎(IBD)とクローン病(CD)に分けられ、腸管の粘膜にびらんや炎症が発生し、発熱や下痢などを伴う自己免疫疾患です。完治が難しく、国の指定難病にも認定されています。
現在の治療法ではステロイドなどの免疫抑制剤が使われています。
私たちのプロジェクトでは既存の治療薬と併用可能な治療法として、腸内の回復を促進する機能を持つ大腸菌を開発することをコンセプトとしています。
詳しくは以下の説明をご覧ください。
プロジェクト詳細
本プロジェクトは、以下の3つのシステムで構成されています。
- キシリトール利用による生存システム
- 腸内修復タンパク質の生産システム
- キルスイッチ(細胞自死)システム
1. キシリトール利用による生存システム
腸内に定着した際、他の腸内細菌に栄養を奪われないよう、一般的な腸内細菌が利用しないキシリトールを栄養源とするシステムを導入します。これにより、改変大腸菌の腸内での安定的な生存を実現します。
2. 腸内修復タンパク質の生産システム
EGF(上皮成長因子)を産生することで、腸の上皮細胞の増殖を促進し、損傷した腸粘膜の修復を促すシステムです。
3. キルスイッチ(細胞自死)システム
疾患が治癒し、炎症に関連する腸内物質が消失したことを感知すると、改変大腸菌が自己崩壊(細胞死)する仕組みです。これにより、治療後に体内や環境に菌が残存しないようにします。
これら3つのシステムを統合した遺伝子組換え大腸菌を設計・構築していきます。
実験開始
6月末より実験がスタートしました。
現在は、夏に予定している各種実験に向けて、クローニング作業を中心に取り組んでいます。実験の進行にあわせて、今後も随時報告をお届けしてまいります。
新入生勉強会・案出し会
4月から新しく入部した新入生メンバーを対象に、iGEMで必要な知識の勉強会を実施しました。Dry班ではiGEMの高校生チームGrand Tokyoの元メンバーをお呼びして講習会を行い、Wet班では遺伝子組換えの講習のほか、論文読みを行いました。
さらに、新入生にiGEMでのプロジェクト立案を通してiGEMを知ってもらうために簡易的なプロジェクト立案を2週間ほどかけて実施し、5/17にその発表会を行いました。
今後の予定
今後実験と並行してwiki(成果報告ページ)の作成を行うことを予定しています。また、8月には中高生向けにiGEM インターンシップを開催予定です。科学や生物学に興味を持つ中高生との交流を通じて合成生物学の魅力を広く伝えていきます。